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一つ屋根の下で外国人と日本人が暮らす『J&Fハウス』の試み
講師 荻野政男さん(㈱イチイ 代表取締役)
2000年10月定例会
 
まち居住研究会メンバーの荻野政男さん(㈱イチイ 代表取締役)が、今春から

「J&F(Japanese & Foreigner)ハウス」という新たな事業展開をはじめました。

これはいわば、"国際版コミュニティハウス"、リビング、キッチン、シャワー

ルームを 共用する短期滞在型賃貸住宅です。入居募集早々から満室御礼の

人気商品 となり、 荻野さんは連日、新聞やTVの取材攻勢でひっぱりだこの多

忙な日々を送っています。 さっそく、このユニークな賃貸住宅を、荻野さんのお

話も交えながらご紹介します。


 
●●閑古鳥の老朽アパートが、一転して超人気商品に●●

イチイという不動産会社で、外国人へのアパートあっせんに取り組んできた 荻野さんは

、 仲介だけではなく、もっと積極的に外国人が住めるアパートを提供しよう と思いたち、

「J&Fハウス」という新商品を企画した。現在、埼京線の十条、 新宿3丁目の繁華街の一

角、 東武東上線の志木で供給されている。いずれも 新築ではなく、古い設備共同の木

賃アパートや 開店休業状態だった簡易ビジネスホテル などをリニューアルした物件で

ある。借り手や宿泊客が いなくなり営業不振に陥っていた 物件が、外国人向けの滞在

型住宅として衣替えしたとたんに、 引く手あまたの人気商品 に生まれ変わったのだか

ら、これはスゴイ!
 
「J&Fハウス」の特徴は、各室には専用設備はなく、代わりに共用のリビング・キッチン

や トイレ、シャワールーム、コインランドリーがあるという点だ。この共用スペースが、

入居者どうしのコミュニケーションの場として重要な意味を持つ。だから設備共同の

アパートや、玄関ひとつで共同風呂の簡易ビジネスホテルは、むしろうってつけの物件

だったといえる。
 
●●リビングでは深夜まで楽しいおしゃべりが続く●●

  「J&Fハウス」に入居するのに、礼金や更新料は必要ない。入居時の保証金2万円と

賃料のみでOK。滞在は原則として2週間以上で、十条のハウスの家賃は 5.5万円(1ヶ

月、水光熱費込み)、新宿のハウスは7.5万円(1ヶ月、水光熱費込み、 個室に冷蔵庫・

TV・エアコン付き)。個室の広さは4畳半~6畳くらいだが、 部屋には布団もあるので家

具を買いそろえる必要はない。共用リビングには、 TV・大型冷蔵庫・電子レンジ・調理

器具・食器類が備わっているので、 食事は自分で作って食べることになる。

夕方になると、昼間は出かけていた入居者たちが戻ってきてリビングに集まり、 各国の

料理をつくったり、深夜までおしゃべりをしたり情報交換をしたり、 なんだかとても楽しそ

う。この住宅にはホテルのようなルームサービスはないが、 住み込みの管理人がい

て、共用部分の清掃や全体のマネージメントも ちゃんとやってくれる。
 
●●国籍も職業も多彩な入居者たち●● 

さて、この「J&Fハウス」の住民たちはどんな人たちだろうか? 荻野さんいわく「予想外

だったのは日本人の若者、特に20代後半の女性の入居希望者が 多かったこと! 外

国人と日常的に接しながら英語を学びたいということで、 反響の6~7割が日本人でし

た」という訳で、「J&Fハウス」には 外国人と日本人が、 ほぼ半数ずつ住んでいる。外国

人の方はというと、 十条の方はアメリカ人の大道芸人、 ホームページのデザインをして

いる ウクライナ人など多彩だ。

一方新宿の方は、家賃が少し高いこともあり、英語の先生などビジネス中心の人が多

いという。5ヶ国語を話すフィリピン人の商社マンも住んでいるらしい。

学生は少なく、年齢的には20代~40代の仕事を持っている外国人が中心という。

 
●●交流やふれあいを求めている若者たちもいる●●

「J&Fハウス」の共通語は英語。入居者の国籍は問わないが、 英語を話せる ことが前

提条件となる。日本人は国内留学的な発想で、 英語をマスターする までここで暮らす

という長期滞在者が多い。 実は、住み込みの管理人も 一風変わった人が志願してくる

という。

例えば十条の管理人は、スキューバーダイビングの先生を目指してオーストラリアに

行くにあたり、もっと英語を勉強したいと思って応募してきたそうだ。 荻野さんによると、

英語が勉強できるうえに部屋代はタダ、経営までは無理でも マネージメントを してみた

い‥‥。管理報酬は安くてもやりたいという奇特な人は結構いるらしい。


「住宅を提供する側は、どんどん設備を専用化して、きれいで設備が良くて オートロッ

クがあり、床がフローリングといった物件こそユーザーに求めれていると考えてきまし

た。しかし、プライバシーを守ってあげると助け合い、挨拶をする必要性も なくなってし

まいます。今の若い人たちの中にも、お互いにふれあえる場所を求めている人も いる

のではないか、日本人にも異なるニーズがいろいろあるということに今回あらためて 気

づきました」という荻野さんの話が印象的だった。
 
※この原稿は、2000年10月のまち居住研究会・定例研究会で、
  荻野さんが講演した内容を中心にまとめたものです。

※もっと「J&Fハウス」について知りたいという方は、
     こちらのホームページをご覧ください。
     http://www.jafnet.co.jp/plaza/

         
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